リハビリテーションに重要なADL!!ADLをちゃんと見ていく事が何故大事なのか?!

日常生活の中で行われる基本的動作をADLと言いますが、一連の動作ができるか否かによって、その人に必要な介護内容を決定する要素になります。ここでは、老後の暮らしに重要なADLについてお届けします。

ADLの重要性について

ADL

自立した生活

現在の日本は高齢化社会に突入しており、高齢者の要介護予防の為に、介護予防の重要性が強調されています。介護予防を図るには、高齢者自身の生活機能アップが必要で、心身機能、活動、参加、これらの3つの要素のバランスが重要と言われています。

介護予防とは…

介護予防とは、私達人間が生きていく為に必要な生活機能を向上させる事によって、自分で自立した日常生活を送れるように、生活の質を向上させる事が目的です。自立した生活を自分自身で送る為には、心身機能アップ、ADLの維持・向上、活動性の向上、社会参加促進等、自分で生きる生き甲斐や役割を持って楽しく生活する事が大切になります。

ADL:日常生活動作

ADLとは「Activities of Daily Living」の事であり、アクティビティー(動作)の「A」、デイリーリビング(日常生活)の「DL」を意味しています。自分で日常生活を送っていく為には、最低限必要となる日常的な動作ができる事が重要なので、その動作を維持していく事が求められるのです。

日常的動作とは…

起居動作、移乗、移動、食事、更衣、排泄、入浴、整容等の動作が挙げられます。これらの動作は、高齢者や障害者に対しての身体能力や日常生活レベルを図る重要な指標として用いられています。実際に、リハビリテーションの現場や介護保険制度では、ADL動作の一つ一つに対して、できる事・できない事を判断したり、どの程度の介助が具体的に必要か把握したりしています。そして「できるADL・しているADL」の項目でADLを総合評価します。

ADL低下による悪循環

ADLは身体機能・認知機能・精神面・社会環境と深く関わっています。老化、生活習慣病、神経疾患等が原因で、これらの機能が一つでも下がってしまうと、それがADL低下に繋がっていくのです。
例えば、身体機能が低下する事で、自分で自ら立って歩くと言う事が難しくなり、移動する動作を一人で行う事ができなくなります。他にも、認知機能が低下する事で、物事を行う手順を忘れてしまい、家事が進まない、人とのコミュニケーションが困難になる等、生活を円滑に進めていく事ができなくなります。
このように、身体機能や認知機能が低下してしまう事で、自分で活動できる範囲が狭くなり精神的にも塞ぎ込みがちになってしまうので、社会参加に対する意欲にも大きく影響してきます。体の機能が一つでも低下する事は、他の機能低下を招く要因にもなり、様々な悪循環に繋がってしまうのです。

ADL低下を予防する方法とは…

ADL低下を予防する為には、まず、現在の日常生活を現状維持していく事が大切なポイントになります。維持して行く為、自分で家事を行う事を継続したり、自分に趣味等を持って人とコミュニケーションを取ったり、このような行いが老後のADL低下予防に繋がります。どうしても高齢になっていくと家に引きこもる事が多くなってしまいますが、家から外に出てできるだけ活動を増やす事は大切な事なのです。

ADLの種類

① 基本的日常生活動作:BADL

BADLとは「Basic Activity of Daily Living」 の略で、日本語では基本的日常生活動作と言います。日本ではADL「Activities of Daily Living」の方が一般的ですが、BADLもADLもどちらも同じ意味合いで大きな違いはありません。
BADLでは、日常的に人が繰り返し行う基本的な行動を項目に分けて評価していきます。評価指標には2タイプの指標があり、その総合評価でADLの状況を見ていきます。
[評価指標]
バーセル指数と機能的自立度評価法
BADLを見ていく際には、バーセル指数では10項目、機能的自立度評価法ではセルフケア8項目、移乗3項目、移動2項目、コミュニケーション2項目、社会的認知3項目、これら計18項目でADLの評価を行っていきます。多くの介護現場ではADLを評価する際に、バーセル指標を基準にしている所は多いです。

② 手段的日常生活動作:IADL

IADLとは「Instrumental Activities of Daily Living」 の略で、日本語では手段的日常生活動作と言います。ADLやBADLに比べて、高度な生活機能測定を行うものになっています。IADLでは、電話対応、買い物、食事準備、家事、洗濯、移送方式、服薬管理、財産管理、これら計8項目でADLの評価を行っていきます。IADLに関しては、特に一般的な施設で使用される事はほぼ無く、IADLは在宅介護において活躍している指標になっています。
IADLは、在宅生活の自立の可能性を測る上で評価に重要な項目となっています。IADLでは、男女で採点項目が異なると言う違いがあります。女性は8項目を全て見て評価されるのに対し、男性は食事準備、家事、洗濯を除く5項目で評価していきます。
ADLの評価基準とは…
ADLの評価基準には3段階あります。

できるADL:身体の機能、能力として発揮されるADL
しているADL:実際に実生活で活用しているADL
するADL:実生活の中で将来的に必要となるADL

高齢者のADLを評価していく上では、自立支援や生活の質であるQOL向上の判断基準になります。例えば、評価や訓練で「できるADL」だったとしても、本人が実生活の中で活用していなければ意味がないのです。なので、リハビリテーションでは「するADL」を想定し「しているADL」を増やすと言う事がとても重要になります。他にも、動作をできる・できないだけで判断せず、高齢者の日常生活の様子をしっかり観察し「その人らしい生活」を尊重する事も大切なポイントになります。

するADLについて

ADLには基本的に「できるADL」と「しているADL」があります。ですが、実際のリハビリアプロ-チを進めていくに当たり重要なのは「するADL」になってきます。本人自身が将来的に生活の場で行うであろうと予想され、それを目指していくADL能力が大切なのです。
「するADL」とは、「できるADL」や「しているADL」を高めていけば到達するものではありません。初めから具体的な「するADL」のやり方を想定した上で、それを実生活で実現する為には、どう言った順序を経て「しているADL」まで実行させるかが大事になります。その上で、「できるADL」ではどのように訓練していく事が良いのか、優先順位を決めてリハビリが行われます。このように、「するADL」と言うのは、目標となるADL訓練を経て初めて達成できるものなのです。

最初から「するADL」を想定する理由とは…

最初から「するADL」を想定する理由ですが、それはADL項目の具体的な手順や方法は多種多様なので、本人の状態、環境、生活スタイル等によっても、必要な手順や方法での優先順位がそれぞれで変わってくるからです。ADLの訓練では、同じ疾患や障害を持っている人であっても、一定の決まった順番があったり、その手順を守って向上させたりしていくものではありません。
リハビリの目標は本人自身のQOL向上ですが、本来QOLと言うのは極めて個別性のもので、具体的な生活像から成り立っています。なので、本人が将来QOLの高い生活を送る為に必要な個々のADLの具体的目標が「するADL」なのです。

「できるADL」と「しているADL」について

ADLがリハビリの訓練時や診察時ではできるものの、実際に病棟や自宅の生活で本人が実行していないと言うケースは少なくありません。こうした状況には、本来は自分自身でできる可能な動作ですが、患者の意欲がない為にできないと判断される事は多くあります。
しかし、ADLと言うのは、「できるADL」と、「しているADL」2つのレベルがありリハビリアプロ-チの過程でのくい違いはあるものなのです。これらの差の原因には、「できるADL」よりも「しているADL」に重点を置き、患者の日常生活を重視するリハビリ医学の方針にあります。リハビリでは、両者の差をしっかり見極めて原因を明らかにする事で、患者一人一人に合ったリハビリプログラムを作成していきます。